北欧デンマーク通信

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【翻訳記事】デンマークにも存在する保育問題

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デンマークのあるテレビ番組で、保育士と子供たちが一日にどれほど接点を持っているかについてのリサーチが行われました。今回の記事はそのリサーチ結果が書かれた内容になっています。

日本では保育士不足が問題になっていますが、デンマークでも昨今保育士不足が問題になっています。今年デンマークでは保育士の増加を求めデモが行われ、何万人もの人がデモに参加しました。

この記事を読むと、デンマークにも存在する保育士不足の現状が垣間見れます。

 

以下記事のリンクです(2019年10月30日)⇩

リンクを開いて頂くと、タイトルのすぐ下に159秒の動画があります。この動画を見ると、実際メアリが保育園でどのように過ごしていたかご覧頂けます👀ご興味のある方は是非ご覧下さい✨

nyheder.tv2.dk

 

一日のうち保育士と子供たちがどれほど接点を持っているか新たな記録が証明する:それは衝撃的である。

親と保育士の許可のもと、TV2(デンマークのTV)の新たなドキュメンタリーで、通常の保育園で大人が子供たちと一日にどれだけ接点を持っているかについてのリサーチが行われた。

北ユトランド半島のアース(人口8,010人が住む町)、時刻は710分。3歳のメアリは、父親と一緒に保育園にやって来たとき、両手に人形を持っていた。調査の一環として、親が再び迎えに来るまで丸一日、メアリをいくつかの設置カメラで撮影する。一日を通して大人がどれほど彼女に接しているか、そしてどのように接するかについてを記録する。

一日が終わり大人がメアリと接していた時間が合算され、その結果はメアリの親を驚かせることになる。保育園で過ごした5時間30分のうち大人と接していたのは17だった。メアリの父親は「あまりにも短すぎます。こんな状況ならば、保育園にかかる費用を節約して、私たちが働いている間メアリを屋内駐車場に止めてある車の中に置いておけます」と冗談めかしてそう言った。

 

*私たちの子供たちで実験*

デンマークで毎日保育園に預けられている3~4歳の子供は約15万人ほどおり、メアリはそのうちの一人だ。

保育士は母親や父親が働いているときにその子供たちの面倒を見る責任がある。しかし母親や父親が手を振って子供たちとお別れをした後、実際には何が起きているのだろうか。

この問題は今年の初旬にTV2で放送されたドキュメンタリー『見せかけの保育園の真実』で既にリサーチされていた。隠しカメラを設置し、保育園で何が起きているかを撮影したドキュメンタリー番組で、番組を見た多くの親たちを震撼させた。

今回TV2はユトランド半島にある通常の2箇所の保育園の状況をドキュメンタリー番組『私たちの子供たちで実験』でリサーチした。

今回TV2が事前に両親と保育士に子供たちの撮影許可を得た。その保育園は地方自治体から高い評価を受けている保育園だ。

一カ所の保育園では、2人の子供たちがランダムに一日を過ごす中で、いわゆる「発展」と言われる大人との接点の程度が計られる。ここでの接点とは子供と大人の間での会話、そしてアイコンタクトがある場である。

 

大人との交流による発達の測定

'大人との交流による発達'は、オーフス大学の教育学学科で心理学の教授であるグレーテ・クァウ・ムーラーによりドキュメンタリーの中で定義された。

グレーテーは心理学では子供と大人の交流が2種類に区別されると説明する。

非発展交流”は短い伝達だとされる。例えば「靴を履いて」や「それはしちゃダメ」

発展交流”は会話を伴いアイコンタクトを要する。大人が子供の話を聞き、子供が返答する。

設置されたTV2のカメラで、これらの定義からごく普通の保育園で2人の子供を追いかけた。

 

*17分間の大人との交流*

メアリが通う保育園は、ヴェスティマーランズ市(デンマークの北ユトランド地方の自治体)の中で定評があり、保育施設のカテゴリーで一番評価が高い。とりわけグループ内の子供たちへアクティビティを提供するのが得意であると賞賛されている。 

一日が終わり、カメラは合計330分間メアリをとらえた。

その中で大人との望ましい交流があったのは合計17分だった。17分のうち12分は大人がメアリと一緒に本を読んだ時間だった。

「メアリの年齢の子供にとって、大人と接する時間が17分というのはあまりにも短すぎます」とオーフス大学の教育学学科で心理学の教授であり今回のドキュメンタリーにも携わっているグレーテ・クァウ・ムーラーが伝える。

「衝撃的だと思います。12分が読み聞かせの時間だったと聞いたとき、かなりの問題だと思いました。メアリのように小さな女の子がただその場にいるだけで、発展しないような状況があるのです」グレーテ・クァウ・ムーラーはそう語る。

 

*人形を持って一人で歩き回る*

メアリを映した映像から、午前中のほとんどは人形を持って一人で歩き回る時間だったことが分かった。

ある時間帯は、とある部屋の中に入って他の子供たちがしていることを見ていた。しかし、そこで遊んでいた一人の男の子から部屋を追い出されてしまう

いくつかの良い発展交流の良い例がその後見られた。 

メアリは保育士の一人と 5o秒ほど話し、その後ハグをしてもらい保育士と短い会話をする。そして時刻が1210分をまわった頃、大人がメアリが誰と遊んでいたか質問をするが、保育士は質問をするだけで会話は発展しない。

「男の子たちがメアリに部屋から出て行くように言うのを見るのは辛いです。それにこの現場には大人がいません。このようなことが頻繁に起きるのであれば、メアリが他の子供たちを探しまわらないのは当然だと思います」とメアリの母親が言った。

メアリが一人で探しまわるのが特に長い期間であることも、心理学の教授グレーテの懸念を生じさせる。

 

しかし17分間の大人との交流は、子供によっては十分ではないのか?

「子供たちが何もせずにただ歩き回り、大人と交流する時間が17分というのは、子供が自らの成長を促すためにはあまりにも短すぎます。それは疑いの余地もありません。家に帰ってから良い交流を受けたとしてもです」グレーテはそう語る。

大人と子供がどれほど11でいるべきかという時間を正確に設ける必要はないとグレーテは考えている。

しかしながら以下の時間配分が子供の発達に適しているとグレーテは言う。

1/3の時間:大人が率先して子供に遊びを設定・提供する

1/3の時間:他の子供たちと遊ぶ

1/3の時間:大人が子供の遊びをサポートする

 

同じ日に時間を計られたのは、アーテムというバイリンガルの男の子だ。

7時間8分の記録から彼が大人と交流していたのは合計で6であった。

十分な注目を浴びていない子供はメアリとアーテムだけではないということもほのめかしている。

 

*なぜ大人と接点を持つことが大切なのか?*

労働組合に加入しているほぼ14,000人の保育士への新しいリサーチでは、3人のうち2人の保育士が適正に子供の面倒を見れていないと回答した。

このリサーチによると、子供をケアする時間、小さなグループの子供たちと一緒に作業する時間、そして非弱で問題を抱えている子供との時間が不十分であることが分かった。

 

「これは問題です」オーフス大学の教授で子供の発達と学習について研究をしているグレーテ・クァウ・ムーラーとシャーロット・リングスモーセの二人の意見である。

「言語の発達と対人関係の構築の観点から、もしも十分に大人と接していなければ子供にとって大きな問題になります。良好かつ密接な大人との交流が必要です」とシャーロットは言う。

 

*接触は子供に気持ちのバランスの取り方を教える*

デンマークの統計によると、平均して10ヶ月の子供から保育所に子供は通い始める。施設に子供たちが送られるのが世界の中でも最も早い国の一つである。
従って子供たちが母親や父親から離れている間、大人と接点を持つ時間は極めて重要であると専門家は指摘する。

「子供が自分自身を理解するために、大人の安全な愛情と交流が非常に重要であることが調査研究から分かっています。気持ちのバランスを取つこと、他者の立場に立つこと、そして物事に集中することを子供に教えるのに役立ちます」グレーテはそう語る。

グレーテは、いくつかの要因が教育の質に影響を及ぼすと指摘する。

「もちろん質の高い教育が必要です。しかし調査から分かっているのは、保育士に時間が無ければ、どれほど素晴らしい保育士であっても関係はなく無駄になってしまうのです」グレーテはそう言う。

 

*保育園側:十分ではない*

保育園のマネージャーであるアネッテ・ピーターソンは、メアリとアーテムが長時間一人で歩き回っていることは「恐ろしい」と言う。より大人との発展交流があるだろうと彼女は思っていた。

「どうやって子供についていくか、そして一日のうちどれほど短い時間しか大人と交流していないかを見ると腹痛がします。十分ではないと思います」

「保育園は組織と保育士たちの時間を優先させることに焦点を当てています」と彼女は説明する。「そうすることで子供たちへの時間を確保することが出来ます。品質を向上させるために何か異なる方法がないか常に検討しています。組織と優先順位だけで子供たちへの時間が確保出来るとは思っていません。なぜならもちろん働き手が足りていないからです」ピーターソンはそう語る。

メアリの両親は、保育園はプロフェッショナルのレベルであることは間違いないと言う。しかし保育士の子供への交流が行き届いていないため、娘を別の保育園に移動させることを選んだ。

今日、両親がメアリを迎えに行くと、メアリは他の子供たちと遊んでいる。彼女は他の子供たちの名前も覚えている。以前は出来なかった。だから変化が起きたのだとメアリの母親は言う。

 

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